ツナママ日記
 


本田 彩香(ホンダ アヤカ)
1988年生まれ
京都出身
Goh Balletに在席
好きな映画:『The Notebook』、『Legend of the Fall』
好きなこと:美味しいものを食べること、ショッピング


憧れのChan Hon Goh(右)さんと一緒に舞台裏にて

夢を追う。これは、子供すぎず、大人すぎない者にだけ許された特権。
バンクーバーにも、そんな夢追い人たちがいる。彼らが追いかけるものとは何か。
どのようにしてその夢とめぐり逢ったのか。
彼らは今、この街の空気の中で何を感じているのだろうか。
彼ら1人1人が自らの中に秘めているストーリーを聞く。

いつまでも、どこにいても踊り続けたい

第64回:バレリーナ  

本田 彩香(20歳)

ピアノの伴奏と生徒たちの熱気で溢れるバレエ学校で出迎えてくれた彩香。すらりと伸びた背筋と、真っ直ぐに前を見る黒目がちの大きな瞳が印象的だ。年若いバレリーナのビジョンには、人種も国境も超えた世界のステージがはっきりと映し出されていた。

 
   

  バレエと出会ったのは2歳半の頃。「何かひとつだけでいいから、長く続けて欲しい」。そう言った母親が彩香の手を引いて連れて行ってくれたのは、近所のコミュニティセンターだった。ピアノや習字などの習い事教室を開催するそのセンターで、幼い彩香の心をとらえたのが、バレエスタジオ。その日からバレエとの生活が始まった。3歳での人生初舞台は「リスの役でした。バレエっていうより、お遊戯でしたけどね。でも、今思えば、あの頃が一番楽しく踊れてたのかなって。緊張とかプレシャーとか何も考えず、ただ好きなように身体を動かして」。

挫折、そしてバンクーバーへ
  小学校に入学してからも、バレエ教室通いは続いた。学校が終わると真っ直ぐスタジオに向かい、私立中学受験のために学習塾へも通った。週末は、1日中スタジオで過ごした。「そんなだったから、友達もあまりいませんでした」。連れ合って出かけたり、クラブ活動に励むクラスメイトに、うらやましさと孤立を感じる毎日。それでも、彩香が選んだのはバレエだった。舞台に立つことの興奮と喜び、そして達成感。この感覚は何事にも、どんな努力にも、換えられなかった。
  晴れて私立中学に合格し、放課後と週末に加えて早朝6時からのレッスンにも参加するようになり、彩香の毎日はますますバレエ漬けに。海外でもやってみたい、という思いを抱き始めたのもこの頃だ。レッスンの合間に英会話教室にも通い始めた。そんな彩香の最初の大きな挫折は、中学2年生の時。同じスタジオに通う7人の生徒たちと共に受けたコンクールのオーディションで、彩香1人だけ落選してしまう。「先生にも、多分受かるのは私1人だけだろう、なんて言われてたのに、他のみんなは受かって私だけ落ちたんです。かなりショックでした。それからコンクール恐怖症になっちゃって…」。
  スランプの期間は長かった。高校生になってもまだ迷いから抜けきれない彩香は、日本で開催されていた海外のバレエ学校のオーディションに応募。ロシアの名門ボリショイ、カナダのGoh Balletの2校を受け、どちらにも受かった。「全てのことがパパパっと、ものすごく早く決まって。ロシアに行かなかったのは、母親の希望もあってのことなんです。それに、少し前にコロラドバレエのサマーキャンプに参加して、そこで英語も学びましたし」。16歳の夏、高校を中退して単身でカナダに渡った。

ここから始まる世界への道
  バンクーバーに着いて、ホームステイをしながらMain St.にあるGho Balletに通う毎日が始まった。Gho Balletは、今年創立30周年を迎えた老舗のバレエスクールだ。「来たばっかりのときは、やっぱりホームシックになっちゃって。授業の間も、先生に叱られて泣いてばかりいたんです」。様子を見かねたクラスメイトの一言がなければ、彩香はバンクーバーでバレエを続けていなかったかもしれない。「そんなんだったら、さっさと日本に帰れば?」。1人でもやっていかなくちゃ、しっかりしなくちゃいけない。開き直った彩香は、とにかくレッスンに打ち込んだ。最初の1年間、レッスンの後に学校で開催される英語の授業も受けた。気がつけば、バレエに明け暮れて4年の月日が流れた。
  「バンクーバーは、あと1年。その後は、カンパニーに入れれば、と思っていて、そのためのオーディションを受けています。アメリカに行きたいのですが、ビザの関係で難しそうなので、ヨーロッパも考えています。行きたいのはドイツ。将来の夢? そうですね、おばあちゃんになっても、どこにいても、ずっと踊っていたいです」。そう言って少し照れたような笑顔を見せた彩香の世界への挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。

 

 




  バレエだけじゃなくて、普段道を歩いてても
人から綺麗だな、と思ってもらえるような女性になりたい

―日本とカナダのレッスンでは、何か違いを感じますか?
彩香:日本でレッスンを受けたのは、ずいぶん前なので…。でも、こちらだといろんな国の生徒や先生の、違った動きや表現が見られます。インターナショナルな感覚が、私は好きです。

―初めての海外は、アメリカのコロラドですか?
彩香:はい。高校の夏休みを利用して、サマーキャンプに参加しました。実はこのとき、5kgも太っちゃったんです。ハンバーガーにアイスクリーム…ストレスもあったんでしょうけど。帰国して、カナダに行くことが決まっていたんですが、母には「自分をコントロールできないんだったら、行っちゃダメ!」と、叱られました。

現在は食事コントロールも?
彩香:していません(笑)。美味しいもの食べるの、大好きなんです。今は先生の家でホームステイしているから、滅多に外食はしないですけど。朝食はヨーグルト、お昼はフルーツ、夜は中華料理、という感じですね。でも、食べたいものは食べますし、チーズケーキだって、たまにはね。

休みの日は何をしてるんですか?
彩香:週末も練習です。時間があれば、もう疲れちゃって寝てますね(笑)。だからバンクーバーに長くいるのに、あんまり観光もできなくて。でも、たまに友達と買い物に行ったり、この前のお休みにはプールに行きました。シアトルにも、一度遊びに行きましたよ。

 



 

今後、やってみたい役は?
彩香:『スリーピングビューティー』のオーロラです。これまで2回、この舞台ではブルーバードの役をやらせてもらっているんですが、やっぱり一度はオーロラをやってみたい。ふんわりした雰囲気の舞台が好きなんです。

憧れのバレリーナはいますか?
彩香:Goh Ballet主催者の、Goh先生の娘のChan Houさん。バレエをやってるときはもちろん、話し方や歩き方も、もうすっごく綺麗なんです。彼女のように、ただ歩いてるだけでも綺麗だな、と思ってもらえるような女性になりたいです。

今年の夏の計画は?
彩香:今年は、7月に学校の休みを利用して日本に帰国する予定です。以前通っていたスタジオで『くるみ割り人形』のクララをやるんです。練習期間も1ヶ月しかないし、私は背が高いしもう20歳なので、12歳の少女の役をどう演じるかがこの夏の課題です。

日本を離れて、一番恋しいのは?
彩香:お母さんのご飯が食べたいです!

聞き手 編集部


 



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