映画監督 豪田トモさん

godatomo11973 年東京生まれ。中央大学法学部卒業。コンピューター会社で営業マ ンとして 6 年間働いた後、意を決して、夢であった映画監督」を目指 すために来加。

Vancouver Film School や当地のプロダクションなどで 3 年半映画製作を学ぶ在カナダ時に制作した短編映画は、日本・カナダ の数々の映画祭で入選。帰国後は、フリーの映像クリエイターとして活 動。

2010 年、映画『うまれる

2014 年『うまれる ずっと、いっしょ。』

を世に送り出す。(株)インディゴ・フィルムズ代表。

http://www.umareru.jp/

バンクーバーで映画を学んでいた豪田さんに、初めて Oops! に登場 していただいたのは 2005 年 2 月の『Dream』だった。

そして 10 年。 1作目の『うまれる』に引き続き、2 作目の映画を携えて再びバン クーバーに「帰って」来た豪田さんから、映画のこと、ご自身の家 族観のことなど、お話を伺った。

なぜドキュメンタリー映画を?

日本に帰国後の最初の仕事がドキュメンタ リーで、それが面白かったんです。

脚本があっ てストーリーが決まっている劇映画と違い、 ゴールが見えない。

同じ映像媒体とは言って も、和食とイタリアンくらいの違い があるの で、毎日が勉強でエキサイティングで、ドキュ メンタリーの魅力にハマり ました。

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“家族”をテーマにするのはなぜですか?

自分自身、長い間、親との関係が良好でなく、家族の価値が分から なかった。

前作うまれる』の公開と同時に父親になり、自分も家族 を持ったことで、自分たちが幸せになるためにも、 「家族」というテー マに向き合う必要があった んだと思います。

新作の『うまれる ずっ と、いっしょ。』では、

産まれる”、“生きる”、“亡くなる”、そして、遺される

という、誰もが必ず経験する人生の流れ を扱わせてもらい ました。

家族や生命が大事だというのは、言われなくても全人類の皆 さんがわかっていることですが、当たり前すぎて日々の生活の中では 忘れがちです。

でも産まれたこと、生きていること、家族がいること は、実は奇跡の積み重ねによるご縁なんですよね。そのことを頭で理 解するのではなく、心で感じてもらえればと思っています。

出演したご家族は、どのように選んだのですか?

インターネットで募集したり、紹介されたり、ですね。4 年に渡っ て 100 組近い様々な家族を取材・撮影し、自然にあの 3 ファミリー のストーリーにまとまっていきました。

豪田監督ご自身の家族観は、どのようなものですか?

親から十分に愛されていない”という思いが子どもの頃からあり、 親への不信感と失望が 30 歳すぎまでありました。

多くの表現者(映 画監督、作家など)は、親にもらえなかった愛情を埋めたいという思 いが、ものを作り出すエネルギーとなっています。

その膨大なパワーによって「成功」できるかもしれないけれど、本当の意味で「幸せ」 になるためには親との関係を見直さないと、と気づいたことで、前作 の『うまれる』を作り始めました。godatomo6

若い頃の豪田監督は、いかがでしたか?

トゲトゲしていましたね(笑)。よくケンカする、学校はサボる。 勉強する目的がわからないから成績は落ちていく…という感じ。バン クーバーをきっかけに変わり始めたと思います。

その後は、どのように変わっていったのでしょうか?

夢を実現するためにバンクーバーに来て、1 歩踏み出せたことが第 1 歩

第 2 は、日本に帰って映像の仕事でひとり立ちできたという こと。

3 歩目は、現在の奥さんとの出会いですね。100%、自分を 受け入れてくれる人がいたということによって、心の傷が少しずつ埋 まっていったように思います。

そして、4 歩目が 18 年来の夢であっ た映画、前作の『うまれる』を作る機会に恵まれたこと。

映画『うま れる』の製作を通して 100 組以上の家族の妊娠・出産・育児を取材・ 撮影させてもらって、それまで“親が育ててくれた”と頭だけで理解し ていたことを心で感じられるようになり、

親に対して無条件の感謝の 気持ち

が芽生えるようになりました。

親だって完璧な人間ではなく、 自分が求めていた愛情と信頼をうまく表現できないこともあるだろう と、親のことを理解できるようになったのも大きかったかもしれませ ん。

そして「産んでくれてありがとう」と伝えることができ、親もそ のメッセージをしっかりと受け止めてくれた。

それが 5 歩目で、30 年以上に渡った親とのわだかまりは解消 ! という感じです ( 笑 )。そ れからは本当の幸せを実感する日々です。

ご自身にとって、“映画”とは?

思春期の頃から、映画を観るのが好き でした。

いま思えば、映画を 観ている間は「親に愛されない嫌な現実」から逃れられたんです。

バ ンクーバー時代、映画は“だった。

今は、現実であり仕事であり、 人生そのもの です。

2 つの作品は、自分の子どもみたいなところもあ りますから、映画は ” 家族 “ という見方もできますね。

今後も自分の 成長と共にどんどんと姿を変えていくでしょう。


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プロデューサーでもある朋子夫人と愛娘・詩草ちゃん(4 歳)と共 に来加した、豪田トモ監督。

家族と映画製作とは、切り離せない。ブロ グ、講演会、著書など、様々な媒体を通して家族の温かさ・生命の素 晴らしさを発信し続けたいという豪田監督の今後の活躍に、要注目!


ドキュメンタリー映画『うまれる ずっと、いっしょ。』

50 万人以上を動員した前作『うまれる』(2010) に続く、シリーズ第 2 章。

血のつながりのない家族、愛する人に先立たれる家族、死と 向き合う毎日を生きる家族、それぞれの現実に向き合う3家族を 通して、自分たちが生まれてきた意味、家族の絆、命の大切さ、 幸せのあり方を考え感じる作品。重く、暗くなりがちなストーリー が、豪田トモ監督の温かい目を通して、笑いとたっぷりの涙で描 かれている。


原京子

フリーランス・ライター。1994年よりバンクーバー在住。カナダでの5人の子供の子育ての経験を通して、主婦として母としての視点から、タウン誌、雑誌、ウェブサイトなどに情報を発信中。ライターとして、たくさんの方々にお会いできることが人生の宝物。年を重ねるごとに、ますます「人」が愛おしく感じられている。

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