大学生の時、どんどん就職先が決まっていく周囲とは対照的に、エントリーシートを出しても、面接を受けても、ことごとく落とされ自信を喪失していく自分がいた。
「私にはやりたいことも、できることもないのかもしれない…」と悩んでいた時、ふと心に浮かんだのが『英語の先生』だった。
学校の先生という選択肢は中学生ぐらいの頃からあったように思う。「なりたい!!」という強い夢としてではなく、「先生になれたらどんなだろう?」というなんとなくの憧れとして。もちろん、簡単になれる職業ではないし、仮に就けたとしても休む間もなく、生徒という『未来』に対して責任を伴う仕事だということは理解していた。だからこそ、一歩を踏み出す勇気も自信もなかった。
民間企業に落ち続けた私は、カナダに行くことを決意した。英語を勉強したいというのは、半分は建前。本当は、自分に自信が持てるような体験がしたかった。
カナダに来て、いろんな人に出逢い、いろんなことを経験した。カフェで働き、憧れのバリスタにもなれた。辛いことや落ち込むことがあっても、総じて楽しかったなあと思う。それは、違うことが当たり前の多国籍国家の中で、誰と比較することもなく、私は私であっていいと心から思えたからだった。
『短い一生で心魅かれることに多くは出合わない。もし見つけたら大切に…大切に…』
これは、アラスカの自然を撮り続けた写真家・故星野道夫さんの言葉だ。
私は、先生という、かつて心魅かれた職業に対して、ずっと二の足を踏んでいる。このままではきっと後悔する。
それがビザ有効期限半年を残して、帰国を決断した理由だ。