『ANA All Nippon Airways』といえば、記憶に新しいのが「スター・ウォーズ・ジェット」として話題をさらったボーイング787-9 の「R2-D2 ジェット」。
2015年10月18日に、定期便の初就航でバンクーバー国際空港に降り立った時の興奮を覚えておられる方も多いだろう。
それだけではない。ANA は、全世界のエアラインのスター・ランキングを運営する『航空業界のアカデミー賞』とも称される英国Skytrax 社から、最高評価となる「5スター」の認定を受けた世界でも数少ないエアラインの1つ。
2015年12月現在「5スター」のエアラインは、日本ではANA が唯一、全世界でもANA を含め7社しかないという、まさに『ベスト・オブ・ベスト』の称号なのだ。
また、ANA は「人材=人財である」、「会社ではなく『TEAM』である」、「『雑談』もコミュニケーションのひとつ」といった独自の経営ノウハウを持ち、近年その”秘密のノウハウ”が書籍化されて話題となっている。世界が認める最高クラスのエアライン・サービスを提供するANA、その内側でどんな人たちが働いているのか…バンクーバー国際空港内「ANA バンクーバー支店」をお訪ねした。
今回、お話をお伺いしたのはこの「 バンクーバー支店」支店長 松橋 慶典さんと、スタッフの皆さん。
Skytrax 社のランキングで、2013年から2015年の3年連続で5スターを獲得されていますが、どういった点が評価されたと思われますか?
松橋:Startrax 社の調査では、空港での接遇、チェックインカウンターのお客様への対応や、機内サービスを中心に見られます。
最新鋭の機材やプロダクトが新しいといったハードウェア的な部分だけではなく、真心のこもったおもてなしをベースにしたサービスが評価されたのかなと思っています。
トレーニングはどのように行われていますか?
松橋:教育カリキュラムは各部門ごとに系統立てて、システマティックに確立されていますが、特に客室乗務員や空港の地上旅客部門は、新しいシステムが導入されて色々と変わっていくことが多いので、しっかりキャッチアップして、その都度お客様に最新のサービスを提供できるようにしなくてはなりません。そのため、この2 つの部門については、とりわけ教育の制度がきっちり整備され長年行ってきていますので、それが高評価に繋がったのではと思います。
ANA は、Skytrax 社が評価・表彰する「World Airline Award」部門中、空港における航空会社のスタッフや施設などの品質の高さを評価する「World Best Airport Service」を、2013年、2014年に続いて2015年も受賞。まさに日本が世界に誇る航空会社といえる。
バンクーバー~羽田路線就航に伴って新設されたANA 空港オフィスは、開設2年目。バンクーバー支店長松橋さんは入社以来ずっと営業部門で活躍。ANA の北米本部があるLA で約2 年勤務の後、バンクーバー支店長として赴任されたのが2014 年1 月のこと。
スーパーバイザー 運送担当 竹元 野花(やか)さん
主に出発・到着のスーパーバイザー業務を担当しています。チェックイン業務自体は委託先の会社にお願いしていますので、自分自身がカウンターに入って作業を行うというより、委託先の方たちのハンドリング管理や、お客様からご意見をいただいた場合や最終判断が求められるような場面に対応しております。
現在は、定刻13 時45 分に日本からの便が到着、折り返しの出発が15時05分と、便間がとても短いので、ほぼ2時間の間に到着便のお迎えから最終チェックインを終了させる感じになります。
成田空港とバンクーバー国際空港の両方で働かれて、何か違いは感じられましたか?
竹元:もちろん言葉の壁というものもありますが、働き方という点でも、皆さんの働き方が日本人とは違うなと感じることがありますね。日本だとお客様へのきめ細やかなサービスを大切にしているという印象がありますが、外国人スタッフにとっては『日本人が当たり前と考えるサービス』はtoo much と受け取られることもあります。日本でのサービス・クオリティをそのまま発揮するのは難しいなと今は感じていますが、徐々に浸透させていけたらと思っています。
「バンクーバーは人がとても優しくて温かいなという印象です。自然もいっぱいで、こちらに来てより一層身近に感じるようになりました」と、にこやかな笑顔でバンクーバーの印象を語ってくれた竹元さん。日本からの強力な『助っ人』として、ANAバンクーバーチームの一翼を担っている。
世界トップクラスと評されるANA のサービス、そのフロントラインで働くのが客室乗務員(CA)だ。
運良く、日本からの到着便で来られた直後のCA の皆さんにお話を伺うことができた。
ズバリ!
と尋ねてみたところ、皆さん口を揃えて
「何より体力勝負ですね。体力と気力、これがないと長く続きません」。
確かに考えてみれば、機内では搭乗客の手荷物を持ち上げたり、ミールを配膳したり、本来寝る時間帯でもずっと起きていなければならない。目的地に到着しても1 泊で折り返し戻るので、寝られるときに寝る、寝られなくても仕事の時には働く…という過酷さ。
ほとんど「徹夜明け」の状態なのに、疲れた様子は微塵もなさげな様子で快活にお話してくれた皆さん。聞けば、バンクーバーグループ、デュッセルドルフグループ…など、月1 回決まった路線に乗るグループ割があり、そこを中心に他路線からのサ
ポートメンバーを含めてチームが構成されているそう。それも、チームワーク構築の秘密なのかもしれない。
Photos:ANA Facebook
到着した飛行機を点検し、安全に無事に送り返すという重要な責務を担うのは整備部門。今回お話を伺ったのは、整備士歴40 年のベテラン、岡村さんだ。
成田整備部マネージャー 岡村 克己さん
バンクーバーオフィスの佐藤マネージャーが週休2 日なので、2日間の休みを他からの出張でカバーします。私は成田からですが、シアトルやLA から来る場合もあります。普段から出張で色々な所に行きますが、バンクーバーはスタッフみんながすごく仲が良くて、チームワークが良いので特にやりやすいです。「人」が良いですね。(Oops!: 同席されていた松橋支店長が嬉しそうでした)
40年の経験の中で、どういう点が変わってきたと思いますか?
岡村:今バンクーバーに飛んできているB-787から劇的に変わりました。B-787はプログラムの飛行機なんです。タッチパネルで飛行機の状況が全部わかるとようにコンピュータライズされているので、ソフト面での整備が中心です。以前の、ツール持参でリンケージやワイヤリングをチェックするハード面での整備が中心だった頃とは全く違いますね。
そうした劇的な変化については、戸惑いなどはありましたか?
岡村:最初はありましたが、携わる時間や人数が増えて行くにつれて、色々な情報交換などもできるようになって大分慣れてきました。新造機の場合には必ず” 初期故障” というものがありますが、そういう点も落ち着いてきています。新機種が出るたびに整備の勉強をしますが、1機種勉強するのに1年はかかります。学生の時よりも勉強してますね。整備の人はみんなそうだと思います。
長年、整備に関わってきた岡村さんにとって、特に好きな飛行機はありますか?
岡村:B-787は、革新的ですごい飛行機だと思います。非常にシステムが複雑なので、飛行機のシステムそのものが自分で悪いところを見つけて指示してくれるんです。こっちは教えてもらった指示を確認して、ステップが正しいかを検証したら、あとはステップに従って処理をしていけばいい。
比較的考えないような、そういうシステムになっています。
ただ、個人的には、B-787が就航する前のB-767、あれが一番好きですね。古い設計の飛行機なので、自分で考えないといけないんです。だから面白い。そこが決定的に違いますね。
すべては「お客様」のために
世界トップクラスと評される会社ANA を内から支える一人ひとりが、まさに『世界一の人財』。そして『チーム力』で成果を出してきたANA という会社の一端を覗かせていただいた。
次にチームの一員になるのは、あなたかも?
Photos:ANA Facebook