英語教師への道  その4


 ちょうど去年の今頃のことだ。私の勤める学校では、冬休みを利用したウィンタースクールがある。その中で毎年、英語検定講座が開講される。中学生の英検取得率を上げる試みの1つであり、生徒は希望級に応じて申し込みをする。私は新任教師にもかかわらず、英検の1講座を任せてもらえることになった。英検4級の講座だった。
 初めての、通常学級の生徒との英語の授業だった。正直、何を教えられるだろうかと、とてもワクワクしていた。上手に教えられないかもしれないという不安はあまりなかった。1回目の授業では過去問を解かせて、そこから解説をしようと準備をしていた。4 級講座を希望するのだから、4 級の問題をすんなり解けるものだと思っていた。でも、それは大きな間違いだった。
 時間を与えてもペンが進まない。いざ解説をしてみても、重要な文法事項も知らない。そもそも4 級は中学校2 年生の教科書レベルであるが、その講座には1 年生も多く参加していた。冷静に考えるとわかるはずだけれど、過去問を与えるだけでは解けるはずもない。
授業を持たされることだけに舞い上がって、念入りな授業構成を練ることができていなかった。どうしていいものかわからず、焦りを隠せない私に、ある生徒は「先生、出遅れてますね」と冷ややかに言った。今ではその生徒も、廊下ですれ違う度に声を掛けてくれるのだが、あの時は悔しくて、腹が立って仕方がなかった。どこにぶつけていいかわからない怒りを抑えきれなかった。
 この経験から、授業はわからないものを教える場所なのだと改めて実感した。生徒に問題を与えて解決することができるなら、教師の存在は必要ない。一番大事なのは、生徒がより簡単に、より深く理解するために、適切な手立てを与えることだ。冬休み、本来なら教師は少しゆとりを持って仕事に臨める期間である。私はこの間、授業準備に追われながら、二度と「出遅れてますね」なんて言われまいと日々奮闘していた。(続く)
               


Yuka

英語とカフェが好きで、コーヒーの街・バンクーバーにワーホリしにやってきました。趣味は写真を撮りに散歩すること。日々英語と仕事に奮闘中。

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