5月・皐月(さつき)
早いものでもう立夏(5月5日)、夏の始まりです。5月は旧暦で「皐月」、早苗月や五月雨月などと呼び名は様々なようですが、いずれも耕作を意味する言葉に由来しているようです。また旧暦の5月に美しく咲くツツジといえば「サツキツツジ」のことですが、清々しい青空に若葉の緑とツツジの鮮やかな花が、田んぼのあぜ道を美しく彩る頃です。
季節と日本酒
この季節と言えば「目には青葉 山ほととぎす初鰹」という俳句が思い浮かびます。山口素堂の句ですが、この季節の美しい風景と人々の暮らしを何とも上手く表現していますが、日本酒ファンである私に取っては「初鰹」が出回る季節でもあり、大変楽しみな季節到来です。「和食」は季節の素材本来の味を活かし、季節感を大切にする料理と言えますが、食材だけでなく、もてなす場やタイミング、そして何よりお客様を大切にお迎えする心、一つひとつに意味があり、それらが調和されて相手に伝わる「和」の心、つまり「お・も・て・な・しの心」なのです。
「以和為貴」と「和醸良酒」
聖徳太子の『和を以て貴しとなす』は、中学の社会の授業で習った記憶があります。ただ単に体裁だけを取り繕い仲良くするのではなく、道理を持って正直に議論し、お互いを認め協調しなさい。つまりお互いの違いを認め合い、私心を捨て協力しなさいということになるのでしょうか。
酒造りには『和醸良酒』という言葉があります。その意味は2つあり「和の心は良酒を醸し、良酒は和の心を醸す」という意味だそうです。蔵人たちは、杜氏のもと、心と力を合わせ、息をそろえ、共に酒の産声に耳を澄ましながら、ひと冬を蔵で過ごします。そして蔵人たちは共に心を合わせて醸すのです。まさに和の心ですね。
皐月の季節、我々も和の心を大切にしたいものです。では一献献上!