2019年・新年
新年あけましておめでとうございます。
2016年にスタートした日本酒コラム『一献献上』も3回目のお正月を迎えることになりました。日本の伝統文化ともいえる日本酒を少しでもカナダの皆さんに楽しんでいただきたいという想いから書き始めました。今年も日本酒を楽しんでいただけるような何かヒントになればと心より願っています。
1月・睦月(むつき)
「正月」は睦月、嘉月、初春とも呼ばれるおめでたい年の初めの月です。家族が集まり、仲良く睦び合う月、つまり睦び月が「睦月」というわけです。
直心の交わり
茶人・千利休が考案したとされる茶室の入口「躙口」。茶室に入るには、頭を低くし躙口を潜らなければ中に入れません。先ず自分を一度捨て、ありのままの姿で人と向き合いなさいと問うているのです。それが利休が狭い茶室で追及した「直心の交わり」です。直心とは仏語で正直な心を意味しますが、利休は茶の湯で客を迎える心根として礼儀正しく、素直な心でもてなしさいというものです。身分に関係なく心を寄せ合い、なごやかに睦むという、人として大切な徳目です。まさしく「和の心」と言え、新たな年の始まり、睦月に「直心の交わり」で人をお迎えする心の余裕を持ちたいものですね。
新しい年を迎えて
「あらたまの 年たちかへる 朝より 待たるるものは鶯の声」、素性法師が正月の新たな心持ちを詠んだ歌です。師走の慌ただしさから、除夜の鐘に向かい高まっていた世間の物音は、元旦の朝を迎えて申し合わせたように静まりかえっている。この清らかな元旦の朝に鶯の鳴き声が聞ければ、めでたさもひとしおに感じられるだろうという意味です。平成最後のお正月を迎え、元旦に初めて汲んだ若水と御新酒を神棚に供え、神様と共に新しい始まりをお祝いします。深々と雪降る大晦日の夜、蔵人たちは静かに日本酒の産声に耳を澄まし元旦の朝を待ちます。人肌に芳香立った燗酒を時間を掛けて酌み交わし、季節の恵みを神に感謝します。そして元日から酒造りは続くのです。新しい年が皆さんにとって素晴らしい年になりますよう心よりお祈りしつつ、一献献上!