3月・弥生(やよい)
3月・弥生に入ると、バンクーバーでも日一日と日も長くなり、春の季節を感じるのは温度や天候ばかりでなく、その季節に咲く美しい花々も春を感じる風物詩と言えます。3月が桃月や花月と呼ばれるいわれです。ひな祭り、桃の節句(3月3日)もあり、1年の言わば春を迎える季節の節目です。
「増醸酒」と「アル添」
日本酒は昔より米、米こうじ、水だけで醸されてきました。添加物を加えない「純米酒」です。この「純米酒」こそ ”ホンモノの酒 ”などと重宝されてきた傾向がありました。一方、「増醸酒」とは、米、米こうじ、水以外に醸造用アルコールや糖類の添加物を加えたものを指します。戦後物資が不足した時、増量を目的に「アル添」などと呼ばれ悪いイメージが定着しましたが、アルコール添加は増量やコストダウンだけが目的ではありません。添加する本来の理由は、“劣化を防ぐ”、“端麗辛口にする”、“香りを引き出す”、“酵母の発酵を止める(醸造のコントロール)”です。これらは特定銘酒など高質な日本酒を醸造する時、日本酒の酒質に関わる重要なポイントになるのです。また特定名称酒のアルコール添加量も白米重量の10%が上限と規定されています。
「吟醸酒」の誕生
「清酒」の発祥は、平安時代から江戸時代頃にかけて、寺院で醸造されていたのが日本酒の基だと言われています。僧侶はお酒を醸すことで経済的な豊かさを手に入れ、宗教的かつ政治的な繁栄の礎を築いたようです。これに対して「吟醸酒」は精米歩合60%以下で低温醸造された香りの高い特定名称酒です。江戸後期に「吟造」「吟製」という言葉がその最初だと言われ、実際に「吟醸」という言葉が使われるようになったのは明治後期で、吟醸酒は明治から開催されていた清酒品評会で、全国の酒蔵が技術を競い合い生まれた”新しい日本酒”なのです。現在この「吟醸酒」は、その豊かな香りと飲みやすさで世代を超えて広く愛される日本酒として認知されるようになってきました。
日本酒は、長い時間と季節を経て、蔵人たちの汗と叡智の結晶で醸されてきた日本人が誇れる文化なのです。素晴らしい日本酒に一献献上!