火曜日は映画に行こう!
原題と邦題を隔てる見えない壁とは

原題と邦題を隔てる見えない壁とは  

 4月から公開されている『Going in Style』はMorgan Freeman、Michael Caine、Alan Arkin のオスカー俳優レジェンドが3人も出ていて、銀行強盗で大暴れする…というプロットだけでも見るのが楽しみになる映画だ。日本公開も決まって嬉しい限りだが、気になるのが日本の邦題。よりによって『ジーサンズ はじめての強盗』だと? 原題(カッコよく行こうぜ!風)から受けるイメージがまったく反映されてない!…映画の内容は十二分に反映されてるけど。これが日本における邦題決定の根本ルールなの? 全然カッコよくない。今回の『Going in Style』は1979 年公開の同タイトル映画のリメイクになるのだが、オリジナル版の日本公開時の邦題は『お達者コメディ/ シルバー・ギャング』だった。時代を感じさせるほのぼのさはあるものの、まだ「内容直訳」という暴挙には至っていない。  

 洋画の公開日というのは通常の場合北米が先なので、こちらで見た映画が数ヵ月遅れて日本のメディアで取り上げられたりする。その時に気になるのが邦題だ。最近の” ヒット” は、表の顔は有能な会計士、裏の顔は凄腕の仕置人をBen Affleck が演じた『The Accountant』(2016)。日本公開時には『ザ・コンサルタント』になっていた。邦題になったら転職していた例だ。Jake Gyllenhaal 主演の『Demolition』(2015)は端的なタイトルが逆に主人公の人生を象徴的に物語っていて余韻溢れるチョイスだなと思うのだが、これが邦題になると『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』という、天気予報感溢れるタイトルに大化けしていて、原題の片鱗もない。また、子供向け映画の世界も侮れない。レゴの世界でバットマンが活躍する『The Lego Batman Movie』(2017)。子供だけでなく大人まで楽しめ、かつ泣けるバットマン映画の大傑作である。邦題は『レゴバットマン ザ・ムービー』で久々の安心感…と思いきや、日本には「吹き替え」という落とし穴があったのだ。バットマンが電子レンジでロブスターをチンするお一人様ディナーの場面は哀愁をそそる名シーンと言って良いが、日本公開版の吹き替えでは「ロブスター」が「伊勢エビ」になった。立派な食品偽装案件である。  

 反面、『ムーンライト』(2016)は『月光』にはならず、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)も『海辺のマンチェスター』にはならなかった。原題→邦題への変換プロセスの闇は、まだまだ深いのである。

高野 宣李(たかの せんり)
Twitter: @usagy_van
さすらいの旅がらすライター。2002 年からバンクーバーに在住。好きな海外ドラマ、映画は数知れず。面白ければ何でもござれの雑食系で、カナダ、アメリカ、日本を股に掛けて映画やテレビを追っ掛ける日々。
Web 媒体を中心に海外ドラマや映画レビューなどを執筆。
海外ドラマ&セレブニュースサイトtvgroove.com
オフィシャルブログ『usagy のアメリカンTV 気まぐれウォッチング』を不定期更新中。

こんな記事も読まれてます。