鉛筆、包丁、噛み合わせ?
石膏は2、人間の爪は2.5、ナイフの刃先は5.5。さて、この数字は何を表しているのでしょうか?
実はこれ、ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースによって提唱された“モース硬度(Mohs hardness)” という単位で、ダイヤモンドの固さを10 としてこれを基準に他の物質の固さを表しています。
ちなみに人間の歯の表面のエナメル質は7ですから私たちの歯は鉄よりも固いということになります。
しかし自然界の法則で、形あるものはいつか必ず壊れます。残念ながら私たちの歯も例外ではなく、いくら大切に使っていても徐々にすり減っているのです。ということで、今回は咬耗(歯の磨り減り)についてのお話です。
それでは、私たちは普段どのくらい歯を使っているのでしょうか?以下のデータを参考にしてみましょう。
(1) 噛む力は成人で約50kg、乳歯の子供で約20kg、ギネスブックの最高記録は400kg オーバーだとか!?
(2) 歯にかかる力はラーメンで1kg、ハンバーグで2kg、お煎餅やきんぴらごぼうで10kg 以上!
(3) 噛む回数は伝統的な和食で一食あたり約1000 回、子供達の大好きなカレーやスパゲティで約560 回、これに1 日3 回x365 日を掛けてくださいね。
いかがでしたか? 普段意識することは少ないと思いますが、私たちの歯がいかに酷使されているかご理解いただけたと思います。もし過度の咬耗を放置したらどのような弊害があるのでしょうか?
エナメル質の下の象牙質が露出することで歯がしみて、食事や歯磨きの妨げになったりします。また、象牙質はエナメル質よりもやわらかいので磨り減りのスピードが早くなります。治療法としてはレジン(白い材料)で失われたエナメル質を補ったり、クラウンでカバーすることもあります。どちらにしても神経に影響が出てからでは遅いので、早めの発見が大切です。
今回のタイトルを見て「?」と思った方もいらっしゃると思います。答えは、身の回りで磨り減って困ることベスト3でした。( 文 澤井靖典)