『入れ歯今昔物語』〜その2
先月に続き入れ歯のお話です。
今回は多数歯欠損(大部分の歯を失った場合)についてですが、この場合、選択肢は総入れ歯かインプラントになります。
昔の入れ歯については前回書きましたので、今回は昔のインプラントについてお話しさせてください。
18世紀のイギリスでは歯を失った場合、他人の歯を移植する行為がよく行われていたそうです。
移植の方法は以下の2 つがありました。
1つは貧しい若者たちから抜いた歯をその場で移植するトランスプランテーションという治療でとても高価だったそうです。
もう1つは亡くなった方々から抜いてきた歯を幾つか用意してそれらの中から抜けた穴に合うものを移植するという治療で、トランスプランテーションよりも安く一般的だったようです。ただ現代のような知識や技術のなかった当時、この処置が感染症の蔓延につながることも多かったようです。
さて、現在の私たちはそのような心配なく治療を受けることができます。
例えば入れ歯の場合、シリコーンのペーストを使い、患者さんの精密な歯ぐきの型を採り、それを元に入れ歯を作るのですが、金属のフレームを使い、入れ歯をできるだけ薄くしたり食べ物の温度を感じやすくするなどの工夫ができます。
ただ残念ですが、総入れ歯の場合、噛む力を歯茎だけで支えますから、ご自分の歯に比べると噛む力は落ちます。
そこで登場するのがインプラントです。顎の骨がしっかりしていれば、インプラントの上にブリッジを作ることもできますし、ブリッジが無理な場合でもインプラントと入れ歯をアタッチメントという器具でつなげて安定させることも可能です。
もちろん感染症の心配はありません。
医療技術は日進月歩です。もしお困りの場合はかかりつけの先生たちにお気軽に声をかけてみてさい ( 文 澤井靖典)