お客様からの一番多い質問がある。
僕は、指圧をすることそのものが楽しく、お客様に喜んでもらうことにずっと無我夢中なのですが、この質問に対しては『指圧』を脇に置いて話をします。
「栄養、運動、休養、仕事、生活習慣のすべてを見直して予防すること以外、治りません」
皆様、何かの判決を受けたかのように、ガッカリされます(苦笑)。
僕は、指圧を専門にしていますが、立場や考えとして、これを宗教的に崇めてはいけないと己を戒めています。
世の中には、様々なマッサージや治療法が存在していて、それぞれが長所を持っている。だから僕は、指圧だけを崇めたり、他の術を批判したりせず、堂々たる指圧をして、足りない場合はカイロプラクティックを薦めたりもします。
それと、お客様の弱みにつけこむような真似をしないと決めています。どういうことかというと、『これだけの頻度と時間で指圧を受ければ治る』とか『指圧を受けねばもっと悪化する』という意味のことは言わない。お客様に過度の期待や不安を煽らない。
皆様、心身の不調や不安を抱えて、指圧に来て下さいます。苦痛から逃れたい一心です。僕はお客様と対等に接したいと思っても、そこには自然に上下関係的ギャップができる場合もあります。 ある指圧師の方から
『わざと治さない方がお客様がすぐ戻って来るから儲かる。君は治し過ぎるから良くない』
と言われたことがあるのですが…。
なんちゅうこと言うの??? 僕の大好きな指圧を冒涜し、お客様を欺くことなんてありえない。もちろん、僕も生業で指圧をしているので、お客様にたくさん来ていただきたい。でも、絶対に手抜きなんかしたくない。だから僕は、一生懸命に指圧をした上で自己予防を促し、定期的な指圧を薦める。そういう考えで接客しています。
1 年間にわたって読んでいただいた『とろかす指圧』は今回で最終回。
この連載での、僕の指圧に関する考えや思いから、皆様が自分の身体のケアと指圧に興味を持っていただけたら幸いです。