Wellness and the Nature
最終回 汗を流すということ

最終回 汗を流すということ

8月中旬、バンクーバーより東へ200kmほどにあるManning Provincial Park にて開催されたFat Dog 120 というトレイルランニングレースに参加して来ました。距離は120 マイル(およそ200km)、制限時間49 時間と、想像しがたいものではありますが無事完走することができました。
 行動時間も長いのでそれ相応の汗をかきますし、エネルギーの消費も多くなります。計算したところ、今レースのみで一般男性の 1週間分のカロリーを消費するようです(栄養代謝は個々人で異なります)。通常、過度な運動をすると免疫力が低下し、体調を崩しやすくなりますが利点もあります。それは汗をかくことによる『Detox(デトックス)』です。今や一般的に知られているデトックスは体内に貯まった毒素や老廃物を排出することです。
 現代人は毎日生活するだけで毒素を取り込まざるを得ません。排気ガス・食品添加物・食品に濃縮されている水銀や鉛といった 重金属など多種多様です。これらの毒素は体内に貯まってしまうと様々な疾患の原因となります。生活を送るだけで否応なしに取り込んでしまうので、意識的にこれらの毒素を排出し体内を綺麗にする必要があります。
 その方法の1つが「汗をかく」こと。ある研究において患者の汗を検査すると、様々な毒素(有機溶剤)が含まれていることが確認できたそうです。つまり、汗をかくことは体内の毒素排出に繋がります。
 その際のポイントは、汗をかいたらすぐに拭き取ることです。汗をかいた後、そのまま放置すると排出された有機溶剤が再び皮膚から吸収されてしまいます。ですので、汗をかいたらその都度タオルなどで拭き取るようにしてください。
 汗をかくことによる効能はまだあります。デトックスと同じくらい効果があるのは集中力向上や精神的安定です。これは汗をかくこと、というよりは運動することに当てはまることですが、運動をすることで主に使用されるのは脳の運動野という部分です。私見ではありますが運動中は他の脳の部位の活動が低下する=休息状態になり、その間に情報の処理が進むと思われます。脳には言語や感覚を司る部位がそれぞれ存在しますが、運動をすることでそれらの部位がリフレッシュし運動後の感覚が向上します。実験でも暗記後運動をしたグループの方が、運動をしなかった方と比べて記憶力の低下が少なかったという結果が出ています。味覚においても皆さんも運動後の方がご飯が美味しい、などと感じたことはあるのではないでしょうか? 
いわば、運動することが脳の切り替えのスイッチのようなものです。勉強や仕事などで机に向かって集中しているのであればある程度の時間で区切り、身体を動かす。そしてまた集中状態に戻るのが一番効果的に運動と作業を進めることができて、なおかつ心身の健康にも繋がる。メリットしかありません。このメリットを享受するにはしっかりと時間管理をする、目的を明確にしてどちらもダラダラと続けないことです。
 運動による達成感は静的な作業では得られない爽快感も伴います。その感覚はより人生を豊かにすると私は信じています。  

 今回で今年初めから寄稿させていただいていたコラムはおしまいとなります。駄文ながらこれまでお読みいただきました読者の方には大変感謝しております。これまでのコラムが少しでも皆様の心身の健康にお役立ていただけていれば幸いです。ありがとうございました。

ヤマモトマサ
名古屋出身。治療家。トレイルランナー。最新の西洋医学と伝統的な東洋医学を組み合わせた手技治療を行う。トレイルランナーとしては国内外多数のレースに参戦。昨夏はアメリカで 100 マイルレース完走。出張治療承ります。bit.ly/masayama

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