ハードな時こそ仕事や遊びを楽しむコツを知って欲しいですね。
昨年2月、バンクーバーのMain St. 沿いに移転リニューアルオープンを飾った『Zipang Provisions』。オーナー・越塚さんのカナダでの料理人としての経歴は、夏の風物詩としてすっかりお馴染みになったリッチモンドナイトマーケットの“たこ焼き屋さん”にまで遡る。
日本の夏祭りを連想させる、あの情緒溢れる屋台で、越塚さんが焼いた"たこ焼き"を食べたことがあるという方も、往年のOops! Magazine 読者の方の中にいるのではないだろうか。
そのナイトマーケットで絶大な人気を博したことがきっかけで生まれたのが、『ZipngProvisions』の前身である、『Zipang Sushi』だ。当初は、現在の3分の1ほどの広さで、こじんまりとした店でのスタートであった。
小さい店ながら、居酒屋メニュー、寿司、丼もの、そしてもちろん、たこ焼きに至るまで、バラエティー豊かな品揃えとあって、日本人だけでなく、地元の人々からも評価は高かった。
そして8 年後、同じMain St. 沿いを少し北へ上がった場所に、装いも新たに大きく生まれ変わった『Zipang Provisions』は、エリアを代表する日本食レストランとして、さらなる賑わいを見せている。
19 歳で調理の専門学校を卒業して以来、日本でもカナダでも一貫して料理の世界に携わってきたかに見える越塚さんだが、過去には、ビンテージやアンティーク好きが高じて、アメリカに渡り住んで衣服や家具の買い付けをしていた時期も。
独立して自身の店を出すと決めた時、迷わずこのMain St. エリアを選んだのも、古き良き時代の雰囲気が現代の風景とうまくマッチしたところに、強く惹かれるものがあったから。
「もともとアメリカに興味があって、グリーンカード取得も考えたくらいなんです。でも縁があったのはカナダのほうだったようで」
と越塚さん。
仕事も、そして趣味や遊びも、いつも全力投球。どちらかのためにもう一方を犠牲にするのではなく、同時進行することで、互いに相乗効果を生み出している。店で提供される絶品の料理はもちろんのこと、そんな越塚さんの人柄や姿勢に惹かれて、今日も常連客たちは『Zipang Provisions』にやって来るのかもしれない。
日本でも飲食系で働かれていたとのことですが、カナダへ来てから、同じ食の世界でもカルチャーショックのようなものはありましたか?
越塚:はい、例えば、カナダでは専門店的なものはウケない、という点ですね。日本では“こだわり”を追求するとか、そういうところが支持される のだけど、そんな価値観が、カナダではなかなか認められ難い。いくらこだわりをもって作っても、ただの自己満足に終わってしまってはビジネスにならないですから。カナダ人が重要視する、盛り付けの見た目の華やかさや、ボリュームにも、気を遣いますね。こちらの人の好みに合わせつつも、けっして妥協をしない味で提供できるように、工夫をしています。
去年、今の場所に移転、リニューアルオープンをされてから、お店の雰囲気も随分変わりましたが、どのような店作りを目指していらっしゃいますか?
越塚:そうですね、雰囲気は居酒屋に近いと思いますが、若い親御さんも子どもを連れて気軽に来られるような、そんなレストランでしょうか。
値段もリーズナブルな設定です。ローカルのお客様も多く、20 代後半から30 代前半の若い方が目立ちますね。
昔、自分が住んでいたアメリカのポートランドと、ここバンクーバーは似ていると思うのですが、ローカルのビジネスから、世界的に大きくなったカンパニーなんかも多いですよね。
小さな地元のBrewery もそういった可能性を秘めていて、当店ではまだあまり広く一般には知られていないようなMicrobrewery(=地ビールメーカー)のビールを多く取り揃えています。
ぜひこだわりの1品を見つけてみてください。
座右の銘
遊ばざる者、働くべからず
越塚 速人 (こしづか はやと)
1991 年 ワーキングホリデーでカナダへ
1999 年 カナダ永住権取得
2003 年 たこ焼き屋を始める
2006 年 『Zipang Sushi』オープン
2014 年 『Zipang Provisions』として移転