社長訪問:YK3 Sake Brewery 小林友紀社長

自分を良く知り、他人も良く知ること 小林さんの座右の銘

yk3logo01 2015 年に設立された『YK3 Sake Brewery』は、日本で修行を積んだ杜氏が、昔ながらの手法で醸造するお酒で知られる酒蔵である。

共同オーナーの1 人として代表を務める小林さんには、大手会計事務所のシニアマネジャーというもう1つの顔があった。いわゆる『二足のわらじ』の社長業だ。

 バンクーバーに来たのは1997 年。高校を卒業して、ただ漫然と大学に行くよりも「英語が喋れるようになったほうが楽しいかなと思った」のが動機だった。ESL で1 年間勉強した後、カレッジに入学。当初はマーケティング専攻だったが、思うところあってアカウンティングに変更し、会計士になることを目標に定めた。

卒業後は、日本でもアメリカでも、どこででも通用する米国公認会計士(USCPA)の資格取得を目指し、社会人になる前の”最後のバケーション”のつもりでアメリカに渡航、自習で勉強しながら、憧れだったサーフィン三昧の生活を送った。

持ち前の集中力で見事試験に合格した小林さんは、日本の就職先での内定もゲットし、『晴れて日本に永久帰国』のつもりだったのだが…。カレッジ時代にCo-op プログラムの一環で働いたことのあるバンクーバーの大手会計事務所から、移民サポートもするからぜひ戻ってきて欲しいというオファーが舞い込んだ。悩んだ末、小林さんはカナダ定住の道を選択した。

 カナダの会社に就職したこともあって、日本や日本人との接点はそれほど多くなかったという小林さんが、改めて日本人である自らのルーツを見つめるきっかけになったのは、奇しくも周囲のカナダ人の友人や同僚たちだった。kobayashi

「実は生魚が苦手で、数年前までお刺身が食べられなかったんです」と苦笑する小林さん。一方で、寿司が今やバンクーバーのソウルフードとまで言われるほどになると、日本人であるが故に、周りのカナダ人から日本食について色々と質問されるようになり、そんな中で興味を抱いたのが日本酒だった。

日本酒といえば熱燗、日本食には日本酒、といったステレオタイプなイメージで日本酒を敬遠している人たちに、日本酒の美味しさをきちんと伝えることができたら認識が変わるのでは、と考えた小林さんは日本で「利き酒師」の資格を取得した。趣味の延長で取ったこの資格が、海を越えた人との縁を繋ぐことになる。
 2012 年、仕事を通じて知り合った、ニュージーランドでビジネスを展開している日本人から、バンクーバーで日本のお酒を作ってみないか?という話が持ち込まれた。たまたま、小林さんが利き酒師の資格を持っていたこと、たまたまリッチモンドに設備の整った酒蔵があったこと、そして、酒造りの要とも言える杜氏との出会い、それらが小林さんにビジネスのスタートを決断させた。

 会社設立と共にYu- 悠ブランドを立ち上げ、純米酒、にごり酒など3 つのラインアップを順次発売。また、リッチモンド特産のベリー類を使った『Yu Berry』では、ローカルビジネスとの新たな繋がりを生みつつある。会計事務所で働きながら、YK3 の経営に携わり、営業、プレゼンなど、小林さんがこなす業務は膨大だ。
 小さい頃から、とにかく自分でやってみなければ気が済まない性格で、スポーツも含め色々なことに次から次へと挑戦した。

「良く言えば、好奇心旺盛で何でもトライする、悪く言えば飽きっぽいんです」

と笑う小林さんだが、反面、こだわりを持ったものは長く、水泳は3歳から18 歳まで続けていたし、会計事務所での仕事も気づけば10 年の節目を迎えた。
『YK3』は、小林さんにとってまだスタート地点に立ったところなのかもしれない。BC 州のリカーストアの店頭に並ぶYu-悠の文字が、やがてカナダ全土、ひいては日本で見られる日も、そう遠くないに違いない。

何かをやることによって自分の経験を積み上げれば、増えた分の中で、選べる選択肢が増える

社名にある「YK 3」の由来は何ですか?

小林:私とNZ にいるビジネスパートナー、そして酒蔵の杜氏、この3 人のイニシャルが偶然にも全員Y.Kだったので、そこから決めました。

酒蔵をスタートする時に、迷いはなかったんですか?

小林:私の本業の立場から見たプロジェクションは良くはなかったんです。それでも、努力すれば可能性はゼロではない。それに出会いの巡り合わせも重なって、これはやるしかない!と。投資という面で損したとしても費やす時間の損にはならないし、今後の自分にとって、お金を払ってでも経験したいと思いました。

こちらのお酒の特徴は?

小林:カナダの「お酒」を、日本で修行した杜氏がカナダの環境で、機械を使わず江戸時代の手法で作っています。そして、酒作りに大切な水、実はバンクーバーの水は、日本の銘水に劣らない品質なんです。

今後の展望は、どのように見ていますか?

products01小林:お寿司やラーメンのように、人が食べ続けて、生活の一部になっていく流れを見てきて、面白いなと思っていました。今やカナダ人がラーメンのスープについて語り、カナダ人の5 歳の子供の好物がツナ刺身とサーモン刺身…という時代です。今度はお酒の良さを、ぜひカナダの人たちにも知ってもらいたいです。ご愛飲いただいている在住の日系の方たちと共に、広めていければと思っています。また、日本市場への逆輸入も進めているところです。

小林さんからのメッセージ~これからの君たちへ

私にとっては「人生に選択肢がある」ということが成功だったと思っています。若いうちに、できるだけ選択肢を増やしておくこと、そのためには、コツコツとした地道な努力が必要ですが、チョイスがある、というゴールを持つと、上手く行くんじゃないかと思います。

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小林 友紀(こばやし ゆき)

1997 年5月 語学留学でバンクーバー渡航
1999 年1月 Capilano University 入学
2005 年 USCPA 合格
2007 年 USCPA資格取得
2006 年1月 Grant Thornton LLP in Canada 入社
2015 年5月 YK3 Sake Brewery 設立


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