怪にして快! 『Isle of Dogs -犬ヶ島』の日本愛
いつかの未来、どこかの日本。私たち日本人も初めて見る、そしてどこか懐かしい感じがする日本。そんな日本を舞台にした『Isle of Dogs- 犬ヶ島』(Wes Anderson 監督)には、全篇最初から最後まで監督の日本愛とこだわりが散りばめられている。「宮崎駿と黒澤明から大きな影響を受けた」とAnderson 監督自身がインタビューなどで語っている通り、音楽の使い方、静と動の見せ方、カメラワークなど、それぞれの監督の作風を彷彿とさせるような場面が出てくる。また、この映画独特の画面はストップモーション(人形を使って1コマ1コマ動かしながら作るアニメーションの技法)で作られていて、細かいところまで作り込まれた緻密な背景や画面に注目だ。日本が舞台なので登場人物=人間は日本語、犬は英語で話している。劇中では日本語の部分を、その場その場で「通訳者」の役割を果たす誰かしらが出てきて英語で解説する、というトリッキーな設定になっている。日本人にとっては「出てくる日本語セリフが聞き取れる」、「画面に出てくる日本語や漢字が読める」という利点があって、2倍楽しめる。
日本の架空都市、メガ崎市。そこでは、犬インフルエンザが蔓延し、病気になった犬は凶暴化。人間の生活を守るため、飼い犬も野良犬もすべての犬が捕獲されてゴミの島=犬ヶ島へ隔離されていた。アタリ少年は愛犬であり
親友でもあったスポッツを探すため犬ヶ島に潜入し、そこで出会った5 匹の犬と共にスポッツ探索の旅に出る。ここで効果的に使われるのが『七人の侍』(黒澤明監督)のメインテーマとも言えるあの曲だ。アタリ少年+ 6 匹の犬=7という数になるのも何か関係が…などと、日本映画とのリンクを探しながら見ると、更に興味深い発見があるかも? 声の出演に名を連ねているオノヨーコ、渡辺謙、夏木マリがどの場面で登場するか探すのもまた一興だ。
(4月23 日現在、Cineplex Odeon International Village、Fifth Avenue Cinemas など
にて上映中)
Twitter: @usagy_van
さすらいの旅がらすライター。2002 年からバンクーバーに在住。好きな海外ドラマ、映画は数知れず。面白ければ何でもござれの雑食系で、カナダ、アメリカ、日本を股に掛けて映画やテレビを追っ掛ける日々。
Web 媒体を中心に海外ドラマや映画レビューなどを執筆。
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