有名な建造物は一度見れば納得しますが、大自然は何度見ても感動します。そして野生動物の姿は見飽きることがありません。広大なカナダの国土には、たくさんの動物たちが人間と共存しています。バンクーバーの市民公園スタンレーパークにはアライグマやビーバー、スカンクが生息し、コヨーテを見かけることもあります。太平洋沿岸にはシャチやザトウクジラが悠々と泳ぎ、ホエールウォッチングに参加すれば、トドやアザラシなどの海洋生物も手軽に観察できます。初冬には渡り鳥のハクガンやシロフクロウが越冬し、冬には白頭ワシが郊外の森に集まり、長い黒首が特徴的なカナダガンはついに渡ることも忘れて、気候が穏やかなバンクーバーに定住してしまいました。ブラックベアはブリティッシュコロンビア州の至るところに生息し、州の北部に行けば大型のグリズリーベアが鮭を狩っています。
また、ブラックベアの希少な亜種で、先住民が畏れ敬う白い熊、スピリットベアに遭遇することも。それぞれの野生動物をテーマにしたネイチャーツアーは、世界中からの観光客に大変人気です。
カナディアンロッキーはまさに野生動物の宝庫。大型の鹿エルクは大きな角を振りかざしながら町中を堂々と歩き、ミュールジカやホワイトテールなどの小さな鹿は林の中を群れで移動します。大きな巻角の羊ビッグホーンシープは山の斜面からこちらを見下ろし、真っ白な長い毛のマウンテンゴートは険しい山の斜面をひょいひょいと飛び移っていきます。湖畔で出くわすのは背丈が2m を超える大きなムース。ヘラジカとも呼ばれますが、実はウマの仲間です。クマもたくさんいますが、ハイキング中には出会いたくないもの。大勢で話しながら歩くと、向こうが避けてくれるとか。足元でチョロチョロしているシマリスやジリスはかわいいものですが、野生動物に餌をあげるのは違法行為なので、絶対に手を出さず、写真を撮るだけにしてくださいね。
マニトバ州北部の町チャーチルは、シロクマ、別名ホッキョクグマ観光の中心地。住民約800 人に対し、約1,000 頭いるシロクマのほうが多いので、出くわしてしまった場合に緊急避難できるよう、町の人々は車の鍵をかけずに駐車しています。シロクマがハドソン湾の海岸に集まってくる10 〜11 月が観光シーズン。クマたちは、湾内が結氷してアザラシが狩れる時期が来るのを待っているのです。その様子を頑丈な装甲車ツンドラバギーで観察に行きます。6 月中旬〜9 月中旬には約5 万頭のシロイルカ、別名ベルーガがハドソン川河口に集結。彼らは好奇心旺盛なので、カヤックやボートからすぐ間近に見ることができます。また、スノーケリングで海に潜れば、「海のカナリア」と呼ばれるシロイルカの鳴き声を聞くことも可能です。
カナダの大西洋岸、セントローレンス湾に浮かぶマドレーヌ島には、北極圏に生息するタテゴトアザラシが毎年2 月末に集まり、流氷の上で出産します。生まれたばかりのアザラシの赤ちゃんは、厳しい自然環境で生き抜くために、急いで成長しなければなりません。誕生直後の黄色い毛は、4 ~ 5 日たつと太陽の光や雪で脱色されて、純白の毛「ホワイトコート」に変わります。栄養豊富な母アザラシのお乳で丸々と太った赤ちゃんは、警戒心がほとんどなく、人が近づいても逃げることもなく、カメラの前で愛くるしい表情を見せてくれます。きれいな白い毛は誕生から2 〜3 週間で抜け落ちて、灰色の大人の毛に生え変わり、その頃には泳ぎの練習が始まり、間もなく母アザラシから独り立ちしていきます。アザラシ観光のシーズンはとても短く、ベストタイミングは3 月の第1 週目。参加できれば一生に一度の貴重な体験になります。観光の発着地で唯一の宿シャトー・マドレーヌには、最低3 泊は必要。流氷にはヘリコプターで移動するので、荒天の日には飛べないことも。また、近年は気候変動の影響で結氷がゆるく、ヘリが氷原に降りられないため、シーズンがキャンセルされたこともありました。ツアーを申し込んだら5 日以内に、キャンセル補償つき海外旅行保険(旅行変更費用補償特約)に加入しておきましょう。通常では払い戻しのきかない航空券やホテルなどの旅行代金が戻ってくるので、万が一の時にも安心です。